「性転のへきれき」には「リアル性転換系」と「非リアル系」がある?

女流作家・田吾作の出版のお知らせの記事に、「オンナ道againを見て田吾作を購入した」という趣旨のコメントの書き込みがあり、そのサイトを訪問しました。オンナ道again オトコに生まれたのにオンナ道を突っ走るアタシwwというサイトの「久しぶりに萌えたTS小説 その2」という記事に「女流作家・田吾作」が気に入ったと書かれており、心から感謝しました。

「ゆかっち」さんによると、性転のへきれきの小説は「リアル性転換系」(1998~2003に出版された旧作もこのリアル性転換系)と、新系統である「SF系」に分かれるとのことで、「なるほどねえ」と再認識した次第です。

元々性転のへきれきは、リアル性転換系が「主義」でした。まずはレーザー脱毛に通って、できる道を一歩一歩自分で歩むことが最も大切という押しつけがましい主張をしてきたような記憶があります。10年余りの休筆の後で書いた「よじれた戸籍」も、まさにリアル性転換主義の代表といえる長編小説でした。

初めてリアル性転換系の外に踏み出した小説は「雷に打たれた女」(美玖の場合)でした。小説の冒頭部分で、非常に古典的な性転換(男女がゴッツンコして雷に打たれた瞬間に入れ替わる)を簡単に完了させることによって、若い女性の身体に入ってしまった中高年男性の心の揺れを描いた作品です。脳の中身が入れ替わるということの意味を自らに問う、私自身が精神的に悩んだ作品です。自分が性転換するという意味・意義について当事者に深く考えるきっかけを提供する、結構面白い作品だと自負しています。

その後はリアル性転換路線に回帰して、

の3作品を出版しました。第三の性への誘惑は、性転のへきれきを「フォレスト・ガンプ」風に書いてみた作品で、インドのヒジュラという公式な第3の性を題材にした自信作です。

リアル性転換へのこだわりから離脱することによって、もっと面白い性転小説が書けるかもしれないと思い立って「ファンタジー・シミュレータ」という装置を考案しました。秋葉原のツクモ電子の角を左に曲がったところにある小さなビルの5階で手続きをして、別世界に飛ぶという設定です。別世界とは心の中(潜在意識を含む)にある願望が実現された世界で、それは結局パラレルワールドなのですが、驚くべき世界です。「危険な誘惑」という作品ですが、性転のへきれきの新作としては出版直後の売れ行きが従来ペースの50%という不振で、MTF読者的にはもうひとつ面白くないというコメントも複数いただきました。主人公が女性であり、パラレルワールドでは主人公の親友(女性)が男性になる(FTM)ものの主人公は女性のまま、ということで、MTF読者としては感情移入できなかったようです。

そこで、主人公を男性として、主人公が彼女と一緒に行ったパラレルワールドでは主人公が女性になり、彼女は男性になる、というストーリーに書き直したのが「危険な誘惑・MTF版」(犬になった女)です。これは飛ぶように売れたというのは大げさですが、通常以上に好評でした。理由としては多分、危険な誘惑(原作、MTF版の両方とも)が性転のへきれき始まって以来の超ドM作品だったからだと思います。原作はMな女性読者を頭に置いて書いたこともあり、どんなドMのAVにも負けないほどM度が高い作品になっています。

その後の出版は以下の通り、リアル性転換系が多いですが、秋葉原の装置を活用して、ディストピア(反ユートピア)のパラレルワールドを描いた「男が妊娠・出産する世界」は結構好評でした。ただ、私がパラレルワールドのディストピアを書くと、どうしてもマゾヒスティックな内容に傾きがちで、この作品も(危険な誘惑ほどではありませんが)M度の高いストーリーになっています。

春日なる性転の泉は、お恥ずかしいのですが「よしっ、そろそろ賞に応募して有名になってやろう」と思い立って書き始めた小説です。結局のところ、早く性転のへきれきのファンの方に読んでほしいという気持ちが抑えられず、すぐにAmazonで出版してしまいました。(賞に応募すると、落選が決まるまで出版できませんので・・・。)長野の佐久にある実在の露天風呂に入った後でその奥にある山中の秘湯に入ると若返るだけでなく性別が変わる、という「性転換メカニズム」です。この「性転の泉メカニズム」は10年以上前から書きたいと思い続けてきたもので、やっと今回実現しました。愛とは何か、性とは何か、魂どうしが引き合う愛について問い続ける作品です。といっても、哲学的なお固い小説ではなく、性転のへきれきらしいエンターテインメント作品になっています。

次作はリアル系2作品と、性転のへきれきでは初めての遺伝子・分子生物学がらみの作品を執筆中で、どれが先に出版されるのかは私自身にもまだ分かりません。

今後も、リアル系を主体に、社会的ソフトSF系(リアル系と重なる場合も多い)、パラレルワールド系(特にディストピア系)を交えて、毎月新作を出していきたいと意気込んでいます。SFの手法を使う場合でも、読んでいて現実世界との境目が分からなくなるようなリアリティの高い小説を書きたいと思います。

 

【参考: 旧作5作品のリンク】

突然の性転換 (ひろみの場合 第2版)
ラブストーリー (かおりの場合)
夫婦スイッチ (由香の場合)
香港の娼婦 (洋子の場合)
あなただけが好きだった (えりの場合)


これは性転のへきれきTS文庫、日英TS文庫、その他の桜沢ゆうの出版物を紹介するHPと桜沢ゆうのブログを兼ねたサイトです。桜沢ゆうは千葉県在住の作家で、1997年に処女作「性転のへきれき(ひろみの場合)」を出版して以来創作活動を続けており、数多くのロマンス小説、ファンタジー小説、サスペンス小説、ソフトSF小説などを出版しています。作品の多くは性同一性障害、性転換のテーマを扱っています。小説の分類としてはTS小説が多く、その他は純文学となります。

「「性転のへきれき」には「リアル性転換系」と「非リアル系」がある?」への2件のフィードバック

  1. 初めまして、ゆかっちです。
    まさかゆうさんが、アタシの記事について書いて下さるだなんて、ホント光栄です!!
    アタシは田吾作や夫婦スイッチのようなリアル系が大好きなので、今後とも楽しみに拝見します。

    1. ゆかっちさん、
      コメントを書き込んでいただきありがとうございます。また、長年のご購読、心から感謝いたします。
      今書いているのは「私はクローン」という非リアル系ですが、その次はリアル系を書く予定です。
      またよろしくお願いいたします。
        桜沢ゆう

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