近年、英語において三人称単数の代名詞として “they” が使われるケースが非常に増えています。これはここ数年の間に顕著になった変化であり、「中学・高校の英語の時間に they は三人称複数の代名詞」と教え込まれた日本人にとって、悩ましいことです。
Theyの単数形について、2025年3月27日付のNew York Timesに心から賛同できる記事が出ていたので、その場でコメントを投稿したところ、採用されました。特に自慢するようなことではないのですが、New York Timesのwebsiteに自分の名前が掲載されているのを見るとうれしくて、つい人に言いたくなります。
この投稿です:
https://www.nytimes.com/shared/comment/46dfpl?rsrc=cshare&smid=url-share
Yulia Yu. Sakurazawa
Tokyo6h ago
As a writer I have been experiencing the problem increasingly. Capitalizing T where “they” refers to a specific person would create clarity in one quick stroke. I will do that from today.
元の記事はJohn McWhorterというopinion writerによる”I Have a Capital Suggestion for a New Pronoun”というものです。
4カ月前から自分の日本語の小説の英語版を出版する作業に没頭していますが、翻訳対象がLGBTQ+小説なので、登場人物の性別が微妙に変化します。日本語の小説なら「桜沢は自分の足元を見ながら言った」と書けばいいところ、英語では”Sakurazawa said looking down at HER feet”または”Sakurazawa said looking down at HIS feet”のいずれかと書かねばなりません。何でもかんでも関係代名詞を使いまくるので、そのたびに性別を明記する必要があるのです。ところが最近は桜沢がnon-binaryの人物なら”Sakurazawa said looking down at their feet”と書くようになってきたのです。
当初は LGBTQやnon-binaryの関係で三人称単数なのにtheyを使うのがカッコいいという風潮があったのですが、最近ではどこもかしこも、臆面なく三人称単数にtheyを使うようになり、洗練された英語の代名詞といえるNew York Timesでさえ、LGBTに限らず平気でtheyが使われるようになってしまいました。日本の中学・高校ではこの変化を生徒に教えているのでしょうか?
英語の代名詞の用法における重要な転換期と言えるでしょう。
現在では、性別が不明な場合や、特定の性別を意識的に示さない場合など、広範な状況で三人称単数の “they” が使われるようになっています。The New York Timesをはじめとする多くのメディアや、学術的な文章、日常会話においても、この用法が一般的になりつつあります。
この背景には、以下のような要因が考えられます。
インクルーシブな言語への意識の高まり: 社会全体で多様性を尊重する意識が高まる中、言語においても性別による区別をなくそうとする動きが活発になっています。三人称単数の “he” や “she” を使うことで、意図せず性別に関する誤った認識を与えてしまう可能性を避けるため、性別中立的な “they” が選ばれることが増えています。
言語の進化: 言語は常に変化するものであり、社会の変化に合わせて新しい用法が生まれるのは自然なことです。三人称単数の “they” は、実は歴史的にも存在した用法であり、現代においてその必要性が再認識され、再び広く使われるようになったと考えることもできます。
文法的な利便性: 性別が不明な人物について言及する際に、以前は “he or she” や “he/she” といった表現が用いられていましたが、これらは冗長に感じられることがあります。”they” を使うことで、より簡潔で自然な表現が可能になります。
三人称単数の “they” の使用は、当初は新しい用法として注目されましたが、現在では多くのスタイルガイドや辞書がこれを正式な用法として認めており、英語の標準的な表現として定着しつつあります。
洗練された英語を使うとされる The New York Times が LGBT に限らず “they” を使用するようになったのは、まさにこの変化を反映していると言えるでしょう。これは、英語がより包括的で柔軟な言語へと進化している証拠と捉えることができます。
このように、中学・高校で習った文法ルールは、社会の変化や言語の進化によって更新されることがあります。三人称単数の “they” の普及は、まさにその好例と言えるでしょう。