日本で同性婚が許可になった日 | 性転のへきれき

日本で同性婚が許可になった日

桜沢ゆうの性転のへきれきシリーズ新作小説「日本で同性婚が許された日」が2015年6月12日にAmazonから発売されました。

5月23日にアイルランドで同性婚を求める憲法改正の是非に関する国民投票の結果が判明したというニュースが報道されました。性転のへきれきの読者の皆さんはどんな感想を抱いたでしょうか?自分とは無関係だと思うか、違和感を感じた人の方が多いのではないでしょうか。

MTFから見ると、同性婚とは男性同士が結婚することであり、多くの場合、スーツとネクタイの男性同士が永遠の愛を誓ってキスをすることになります。自分の心と体が一致していない状態を、身体を女性化することにより解決するのがMTFですから、結婚する場合はウェッディングドレスを着るのが当然です。

でも、戸籍を女性に変更できる前に一生を共にしたいと言う男性が居る場合は、同性婚の許可は歓迎すべきことです。戸籍の変更が完了した時点で、同性婚の状態から異性婚の状態になるだけですから。

「日本で同性婚が許された日」は、同性婚を許可する法律改正が成立した、近未来のお話しです。

主人公の男性は、女性にしか興味が無いノーマルな男性です。そんな主人公にとって、同性婚を許可する法律改正はどうでもいいことで、自分には無関係なことでした。そんな法律が成立したというニュースを聞いた時には「あっ、そうなんだ」と思っただけでした。

しかし、その法律改正のお陰で、無関係なはずのノーマル男性の主人公は、ある日重大な事態に直面することになるのでした。

* * *

日本で同性婚が許された日

第1章 青天のへきれき

 

昼休みが終わり海外営業2課の席に戻りメールをチェックしていると、
「上原君、ちょっと。」
と課長から声がかかった。

僕は何かミスをしでかしてしまったのだろうか。課長が「ちょっと」と言って部下を呼びつけるのは問題が起きたときだけだ。

たまたま先輩社員たちは出張中だったり席を外していたりして、海外営業2課には今年の春、一緒に入社した一般職の香川愛子と僕だけしかいなかったが、愛子はニヤッとして「またドジったんでしょう」とでも言いたげな視線を僕に投げかけた。

「はい、何でしょうか。」
僕は杉田課長の席の横に直立した。

「君、今日の夕方は空いているかね。」
怒ってはいないが、鋭い目で課長が聞いた。

「はい、大丈夫ですが。」

「じゃあ、5時半に出られるようにしておいてくれ。少し大事な話があるんだ。」
課長が思いつめた感じの緊張した顔で言ったので、僕は余計なことは聞かない方が良いと思った。

「はい、承知しました。」

理由はわからないが、まずいことになった。僕が海外のお客さんに出したメールの書き方が悪いとか、最近先輩に指示されて出した韓国の得意先あてのメールのCC:欄に台湾のお客さんのアドレスを入れてしまったことについて再度叱られるとか、日本のお客さんとのアポの時間を間違えて1時間遅れて行ったとか、課長に叱られるネタはいくらでも頭に浮かぶ。先輩たちや香川愛子から「ミス上原」というニックネームで呼ばれる程だ。

だから、課長から叱られるのには慣れていたが、課長の席の横に立たされて皆に聞こえるようにどなられるか、かなり重大なミスの場合は会議室に呼ばれて一対一で叱られるのが普通だった。客先との接待なら職務能力の高い先輩か、客受けの良い香川愛子に声をかけてくるはずであり、わざわざ僕を5時半に外に連れ出すというのは、接待以外の理由だろう。

課長が僕を食事を食事に誘って言いそうなことは大体予想がつく。
「自分としては君を一人前になるまで育てたかったんだが、厳しい環境に置かれた当社では、そんな甘いことは許してくれそうにないんだ。」
というような適当なことを言われて、会社をクビになるか、最良のケースでも子会社への出向を申し渡されるかだろう。

「悪い話じゃないかも知れないわよ。気をしっかり持って、ミス上原。」
一部始終を見ていた香川愛子が、すっかり意気消沈した僕に優しい声をかけてくれた。

運命の5時半が来て、課長がカバンを持って席を立ったので、僕は課長の後を追いかけた。180センチを超える大男の課長が早足で歩いていくのに遅れないようにするのは一苦労だった。エレベーターを降りて会社の玄関に歩いていくまで課長は一言もしゃべらなかった。課長は道路に出てタクシーを拾い、運転手に「新宿野村ビルまで行ってください。」と言った。

「上原君は福島の出身だったね。」
タクシーの中で課長が聞いた。

「ご家族は全員福島にいるのかね。」

「両親と姉が実家に住んでいて、兄は仙台の病院で医者をしています。」

「じゃあ、上原家はお兄さんが跡を継ぐんだね。」

「はあ、父はサラリーマンで跡を継ぐというほどの家ではありませんが、跡継ぎは誰だと聞かれれば、兄と言うことになると思います。」

ここで僕はふと思い当たった。そうか、課長は僕に結婚話を持ちかけるつもりなんだな。跡継ぎがどうのこうのと聞くのは、縁談の相手が一人娘なんだろう。わざわざ六本木に連れてくるということは、取引先の大会社の社長の一人娘だったりして・・・・。頭の中で想像が膨らんだ。しかし、いくら逆玉でも僕にとって相手の女性の外観は大切だ。

僕が結婚したい相手はモデル系美人だ。僕は163センチと小柄で、それが「ミス上原」というあだ名をつけられたもう一つの理由なのだが、結婚する相手は自分より背の高い相手を選ぶのが子孫繁栄のために望ましいと思っている。小柄な男性には背の高い女性に憧れる傾向が強いそうだが、それは本能的で当たり前の気持ちなのだ。

タクシーが新宿野村ビルに到着し、課長が歩いて行った先は50階の展望レストランだった。

入口で課長が「杉田です」というと、「2名様のご予約ですね」といって、窓際のテーブルに案内された。

今日は課長と僕だけなのだ。そりゃあそうだろう、いきなり呼び出してその場で見合いということはないから、今日は話だけなのだろう。いや、まてよ、やはりクビか出向の話かもしれない。僕は気が気でなかった。しかし、テーブル席に着くと、もやもやした気持ちは吹き飛んだ。

「うわぁ、すごい景色ですね。」
眼下のビル群は夕日を浴びて黄金色に輝き、向かい合って座った課長の右頬への照り返しが、彫りの深い顔を引き立たせている。課長の表情から重苦しい感じが消えて、僕に対する視線が優しく感じられた。

「ここは地上210メートルなんだ。日が落ちた後の夜景はもっと素晴らしいよ。」

「きれいでしょうね。本当に楽しみです。」

「気に入ってくれてよかった。実はここは死んだ女房にプロポーズした場所なんだ。私にとっては最も縁起のいい場所であり、同時に最も悲しい場所でもある。」

僕はどんな言葉を返したらよいのか、迷った。
「存じませんでした。そんな大切な場所に連れてきていただいて光栄です。」

ソムリエールが来て課長はワインリストを見てボルドー産のカベルネ・ソーヴィニオンを一本注文した。間もなくワインが来て、少しワインを注がれた大きなワイングラスを器用に回した後、窓の外の夕日にワインを透かしてから口に含み、喉で味わってから、「いいですね」と言った。

「夕日に透かしてワインを見るなんて、偽ワイン通なことがバレバレですね。」
と課長がソムリエールに言った。

「本当にワインが分かる人は、目に見えない情感までを目で読み取ることができると聞いたことがあります。」
女性が気のある男性だけに放つ艶を、課長に対するソムリエールの視線の中に見た僕は、課長が女性から見て魅力的な男性なのだということを改めて知った。立派な体格で彫りの深い顔をしているだけでなく、女性の目から見ると、世界中を歩き回ってきた男性の奥深い魅力がオーラのように発せられているのだろう。

課長の顔にやさしい微笑みが浮かんだ。
「今日は、個人的な話をするために急に呼び出して申し訳ない。」

僕は肩の荷が下りた気がした。個人的な話ということはクビや出向の話ではないのだ。

「ひょっとして、結婚に関するお話しですか。」
僕は単刀直入に聞いた。

「よく分かったね。君からそう言ってくれたら話は早い。」
課長はカバンの中から小さな箱を取り出し、僕に渡した。それは数センチの美しい箱だった。

僕がその箱を開けると、ダイヤモンドの付いた指輪が入っていた。

「君が好きだ。私と結婚してくれ。」
真剣な顔で課長が僕に言った。

 

続きをご覧になりたい方はAmazonでお買い上げください。本編は約10万文字の長編小説です。Amazonでの出版に切り替える前は試読可能部分を本編の約3分の1をめどにしていましたが、Amazonの規約により最大10%しか公開できなくなったため、原則として最初の章のみを公開させて頂いています。どうかご了承ください。

★ 未発表作品に関する情報はTwitterで発信します! ★
カテゴリー: お知らせ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

本ウェブサイトはMixHostのサーバーに引っ越してSSL化を完了し、保護された https:// サイトになりました。詳細はこちらをご覧ください。


ラブトランス~大好きな彼を夢中にさせる方法~


願いが叶う・心願成就



プロフィール
Contact Form
お問い合わせはこちらから
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ  にほんブログ村 小説ブログへ  人気日記BLOG