失われたアイデンティティー

桜沢ゆうの性転のへきれきTS文庫の新作小説「失われたアイデンティティー」を出版しました。MTFのストーリーですが、分類的にはTS小説、性転換小説というよりは純文学に近いと思います。

物語はワールドカップのベルギー戦の朝に始まり、隅田川の花火大会が予定されていた日(台風で翌日に延期されたので花火大会が開催された前日)に終わります。それは私が実際にこの小説を書いた期間とピタリ一致しています。短期間の展開ですがぎっしりと詰まった小説です。思いを込めて書きました。

主人公の間宮孝太郎はアラフォーのエリート商社マンで本社の課長をしています。間宮の課に新たに派遣された綾瀬レイナは表紙カバー画像のような感じの23才の女性です。間宮の目にはアンバランスで場違いな感じのする美人という印象でした。重めの前髪が目の上ギリギリでぱっつんに切られており本来キュートな髪形のはずですが、大人っぽ過ぎる物憂い表情によって相殺されて、人を寄せ付けないオーラが漂っています。

派遣開始直後に、課の歓送会がありました。課員が気をきかせて美人派遣社員を間宮の対面に座らせます。間宮とレイナの間では話が弾み、レイナは間宮に心を開いたかに見えました。お酒の回った間宮でしたが、課長としての責任で、酔ったレイナをタクシーで家まで送り届けることになり、アパートの玄関のドアの前までのはずが、レイナの誘いに乗って部屋に入ります。

そんな僅かの気のゆるみのお陰で間宮は大変な世界を経験することになります。どんなことになるかを教えて差し上げたいのはやまやまですが、この小説の場合は知らずに読む方が新鮮な気持ちで感情移入できると思いますので、これ以上のネタバレは控えます。

TS小説、性転換小説、女装小説を読むと不愉快な気分になる人でも、この小説は抵抗なく読んでいただけると思います。SF小説のようでもあり実は(著者の気持ちとしては)SF小説ではないという作品には他に雷に打たれた女真逆の世界から来た僕と生き写しの女があります。

【後記】2018年7月に出版した本書を2019年4月に再校閲しました。読んでいて、一体これからどうなっていくのだろうとドキドキしました。書いてから一年も経っていなかったのですが、筋を忘れているのです。小説を書くときは殆どの場合がちがちのプロットがあるわけではなく、自分はどうなるのだろうかとドキドキしながら書きます。次の展開についても、複数の可能性が頭に浮かんで、そのなかの一つで書き進みます。私の頭の中には、結局どの筋書きを選んだのかという記憶があいまいなので、読者と同じようにヤキモキしながら再校閲することになるのです。

留置場に入れられた時には、本当に私はどうなるのだろうかと絶望的な気持ちを味わいました。あ、ネタバレはいけませんね。とにかく最後までどうなるかが分からず、緊張感が続く作品でした。原作を購入済みのかたはファイルを探し出して是非もう一度お読みください。作者でもドキドキしたのですから、よほど記憶力のいい方でない限り、改めて楽しんでいただけると思います。


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