性転のへきれき新作「LGBT婚活コンシエルジュ」 | 性転のへきれき

性転のへきれき新作「LGBT婚活コンシエルジュ」

桜沢ゆうの性転のへきれきシリーズ小説新作「LGBT婚活コンシエルジュ」を出版しました。記者ものサスペンス小説で、主人公は絶体絶命の危機に陥りますが、性転のへきれきですので生命の危機に匹敵する色んな危機が次から次へと襲ってきてドキドキするTSエンターテインメント作品です。

事件記者ものサスペンスは以前から書きたいと思っていました。この小説は割合良識的な女性週刊誌の編集部が舞台です。大学三年生の主人公は夏休みを利用して就活目的で長期インターン社員として神楽坂にある大手出版社で働き始めます。編集者の一人が産休を取り、その一時的な穴埋めに主人公がサブとして編集・取材の仕事をさせてもらえることになり、浅草のホテルで二十のOLの死体が発見された事件の取材に加わります。



LGBT婚活コンシエルジュ」

by 桜沢ゆう

第一章 浅草猟奇殺人事件

「加賀見君、十時から編集会議があるわよ」
編集長の的場修子から声が掛かった。

「はいっ、冷たいお茶がいいっすか?」

「お茶出しじゃなくて、編集者見習いとして編集会議に出るチャンスをあげようかと思ったんだけど」

「マジっすか? 是非、出させてください」

思わずガッツポーズをした。ヤッターと叫びたい気持ちだった。

僕はN大学文学部の三年生。神楽坂書店株式会社の長期インターン社員となって一週間、上司たちの罵声にもめげずに頑張ってきた。長期インターン社員とは、大学生が社会人としての勤務を体験するための期間限定社員で、実質的にバイトと同じだ。時給は千八十円と高めで、一般的なバイトと比べて汚れ仕事や不当な酷使は少ないはずだから、今年の夏休みのバイトとしては良い選択だったと思う。

何よりも大事なのは、就活に役立つということであり、そもそも就活に派生して出来た制度だ。僕は編集の仕事に憧れているが、一流未満のマンモス大学の文学部の学生にとって大手出版社への就職は容易ではない。長期インターン経験があれば、エントリーシートの志望動機を書く際に他の学生と差別化できるし、採用面接で話のネタに使える。就活を少しでも有利に進めるために有力な武器になりそうだ。

但し、長期インターンで勤務すれば、その会社で採用してもらえるかというと、そう甘くはない。神楽坂書店の場合は事前説明の際に「際立って優秀なインターン社員を特別選考枠に回すことはありますが、原則として採用選考において長期インターン社員を優先することは無いと思ってください」と釘を刺されていた。

僕は十時五分前に会議室に入り、会議テーブルの横のパイプ椅子に腰を掛けた。編集者と並んで席につくのは恐れ多いと考えたからだ。

的場編集長、園村敦子、神崎晋三、玉井綾香、吉峰摩耶が会議室に入って来た。

「加賀見君、後ろで見ているだけでいいの? 編集会議に参加したいのなら、そこの席に座りなさい」

僕は吉峰摩耶の横の末席に座った。

「篠崎さんが産休に入ったから、穴埋めとして加賀見君に手伝ってもらおうと思うの。加賀見君、インターンが担当者として仕事が出来るチャンスは滅多にないんだから、頑張りなさい」

「はいっ、何でもやらせてください」

「編集長、いくらなんでも学生に取材を担当させるのは無理でしょう。社内で誰か採ってこないと仕事が回りませんよ」
と冷めた口調で言ったのは週刊ウォマンリー編集部ナンバーツーの園村敦子だった。

「そんな予算があったら苦労しないわ。加賀見君のインターン期間が終わるまでには誰か見つけて来るから、ここは皆さんに踏ん張ってもらうしかない。それどころか、週刊ウォマンリーの発行部数がこれ以上落ち込んだら廃刊の恐れもあるんだから、フンドシを締めてかかりましょう」

「あら、編集長。フンドシを締められるのはアタシと加賀見君の二人だけよ」

神崎晋三が僕を右手小指で指さして「加賀見君」と言ったので、背筋がぞっとした。編集者としては優秀らしいが、濃い顔の四十才のオジサンがオネエ言葉を使うのには馴染めなかった。

「晋ちゃん、それセクハラよ」

つまらない冗談は勘弁してほしいという口調で的場編集長が言った。

「そうですよ。加賀見君に対するセクハラですよ。私たちは何とも思わないけど」
と入社四年目の吉峰摩耶が言った。

「無駄口を叩いている暇は無いわ。まず、浅草猟奇殺人事件から行くわよ。綾香、報告して」

三十二才の実力派編集者、玉井綾香が担当する案件だった。

「七月七日の朝、浅草のビジネスホテルで下半身に損傷のある制服姿のOLの死体が発見された事件で、警察は社員証を基に台東区の派遣社員、須藤美奈二十才と発表しましたが、その後須藤美奈は偽名であり、本名は須藤光男、男性と判明。乳房と股間をナイフでえぐられていたため、当初性別が誤認されましたが、司法解剖の結果、性転換手術は受けていないことが判明しました。聞き込みを行ったところ、須藤美奈は複数の男性との交際があったことが判明。ここまでは他誌も把握している内容です」

「股間がえぐられていたのに、性転換手術は受けていないとどうしてわかるの?」

「性転換手術とは単に男性器を切除する事ではなく、大陰唇、小陰唇、クリトリス、膣を形成する性別適合手術を意味します。股間は大きくえぐられていたので大陰唇、小陰唇、クリトリスがあったかどうかは不明ですが、数センチ以上の深さの膣は存在していなかった可能性が高いという検死結果だそうです。つまり、須藤美奈は複数の男性と交際していたが女としての性交はできなかったということです」

「交際していた男性全員がアナル好きだったとしたら話は別だけど……。続けて。まだ他誌が掴んでいない綾香の調査結果を聞きたいわ」

「交際していた男性は鎌田智明、四十才と、貝塚雅治、五十七才でいずれも婚活サービス会社ユーフォリアネットに会員登録をしていたことが分かりました。そして、須藤美奈もユーフォリアネットの会員であったという事実を掴みました」

「彼らがユーフォリアネットの会員だったことを他誌はまだ把握していないのね?」

「その形跡はありません」

「綾香、よくやった。スクープのにおいがするわ。須藤美奈は性別を偽って婚活サービスに会員登録し、カモの男性を捕まえて詐欺を働こうとした。それが露見した結果の復讐または怨恨殺人というストーリーを追っているわけね?」

「編集長、その程度のスクープじゃないんです。現代社会の深部に潜む闇が感じられる事件なんです」

「もったいぶってないで、早く具体的に話して」

「須藤美奈はLGBT会員として登録していたんです。ユーフォリアネットはLGBTというニッチな分野での婚活市場に着目し、六月からLGBT会員の募集を開始しました。須藤美奈はLGBTのT、すなわちトランスジェンダーとして会員登録しています」

「LGBTか! キーワード的にもインパクトのあるネタね! 須藤美奈は戸籍上は男性で、女装してOLとして暮らし、男性との交際を望んでいたというわけか。じゃあ相手の男性二人は、ホモなのかな、それとも女装男性が好きってこと?」

「それが、二人ともノーマルなようです」

「それにしてもLGBT会員の定義がよくわからないわ。女装男性を男性に紹介するのは婚活サービスじゃなく、いかがわしいアダルト交際サービスだよね。戸籍上の性別を変更済みの人だけに会員を限定すれば、婚活と言えるかもしれないけど。性転換手術を完了して性別変更手続き中の人にまで対象を広げないと会員数が確保できないかな?」

「ユーフォリアネットで取材を試みましたが、ガードが固くて、LGBT会員制度の詳細については教えてくれませんでした。LGBT会員は自分がLGBTであることを知られたくないという人も多く、週刊誌に興味本位で採り上げられると肝心の顧客であるLGBTの人たちの足が遠のくのではないかと恐れているようです」

「それで、綾香、どうするつもり?」

「潜入取材しかありません。実際にLGBT会員として登録し、婚活サービスを受けながら取材を行います」

全員の視線が神崎晋三に集中した。神崎晋三は満更でもない表情で言った。

「まあ、いいわよ。でも婚活サービスって結構お金がかかるらしいわ。言っとくけど、会費は全額会社負担よ」

「綾香、どのぐらい費用が掛かるの?」

「登録申込料が一万円、登録料が二万円、初期費用として十万円、それに毎月二万円の会費がかかります。ちなみに、結婚に至った場合は成婚料として五万円がかかります。最低加入期間は三ヶ月ですから、三ヶ月で退会するとして十九万プラス、デート代等の実費ですね」

「もしアタシが見染められて結婚したら成婚料の五万円は会社が払ってくれるのかしら?」

「約二十万円プラス実費ね、いいわよ。晋ちゃん、頼んだわよ」

「すみません、申し上げにくいのですが……」
と綾香が口ごもった。

「実は、入会資格に『オカマは除く』とありまして……」

「何ですって、綾香、アタシがオカマだと言うの?」

「いえ、神崎さんは女もうらやむほどの美しさなんですが、ユーフォリアネットの入会審査基準として、一見して、男性ではないかと疑われる外観の人はダメだと……」

「アタシだっておめかしして完全にメイクすれば、男性だと疑ったりする人はいないわよ」

「……」

「……」

神崎晋三に反論する勇気のある人は出てこなかったが、そこを編集長が上手に仕切った。

「申し訳ないけど、晋ちゃんには、他にも重要な仕事があるから無理だわ。ということは綾香が男装してトランスジェンダー男子会員として潜入捜査することを考えてるわけか……」

「そこまではちょっと……。そんな情報が婚活市場に流れたら、三十二才の私の将来にとっての壊滅的打撃となる可能性があるので……。今、ちらっと頭に浮かんだんですけど、加賀見君にやってもらったらどうかなあ……」

的場編集長は右手でゲンコツを作って左掌を叩いた。

「そりゃそうよね。灯台下暗し! うってつけだわ」

「ま、ま、待って! 勘弁してください。僕には女装婚活なんてできませんよ」

「私のたっての願いを聞き入れてくれないの?」

「いくら編集長でもこれだけは聞けません」

「仕方ない、これから人事部に篠崎さんの穴埋めの人員増を頼みにいくか。インターンは今日で終わりということで」

「それは困ります。バイトがなくなると生活に響きます」

「じゃあ、やってくれるのね」

「いやあ……」

「この案件には大きな可能性があるわよ。週刊ウォマンリーにとって起死回生のスクープになって、社長表彰されれば、担当のインターン社員は特別選考枠での採用対象になるかも」

僕がこの出版社に就職できるとしたら特別選考枠に入れてもらうのが、事実上唯一の道だ。女装はイヤだ、絶対にイヤだ。でも、これはビッグ・チャンスなのだ。僕の人生の可能性を大きく広げるには、今しかない!

「やります。やらせてください」

こうして僕の挑戦が始まった。


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