新作「女になった社長」を出版しました

  • by

新作「女になった社長」をAmazonで出版しました。これは以下の小説の日本語版となるTSエンターテインメント長編小説(10万文字超)で、オマケとして原作も収載されています。

原作:A Feminized President(原作者:Yulia Yu. Sakurazawa)

 主人公の「私」はバンガロールにある企業のオーナー社長です。亡くなった父のあとを継いで社長になったと言われるのが嫌いで、自分の実力に過信するきらいがありました。インドで「第三の性」と呼ばれるセクシュアル・マイノリティーに就労機会を提供すれば社会問題が解決すると言う持論を持っており、友人との飲み会で「自分なら1年間ヒジュラになっても会社の業績を維持・拡大できる」と大言壮語してしまいます。その席には私の妻の元カレだったボーラという男(会社社長)がおり、ボーラから「できっこない。お互いの会社を賭けて証明する気はあるか?」と挑発され、酒に酔った勢いで賭けに乗ってしまいます。私は翌日から女性の姿で社長業をこなす羽目になるのですが……。

***

 私が初めて書いた英語の小説は “A Businessman in Saree: Enchanted into the Third Gender”で日本語版「第三の性への誘惑 」とほぼ同時に出版しました。「第三の性への誘惑」は日本人商社マンがインドに出張した際にジプシー楽団の踊り子を見て電撃的な恋に落ち、その踊り子の誘惑に乗ってヒジュラになるという小説ですが、今でも自分の書いた小説の中で好きな作品の最上位を争っています。

ヒジュラはインドに行ったときに何度か見かけたことがありましたが、小説の執筆をきっかけに多くの文献を読み、ネットで検索したり、現地で聞き込みをして勉強しました。執筆当時、日本語で書かれた文献は極めて少なかったのですが、7年経った現在ではネットの検索でかなりの情報が得られるようになりました。

当時、私はヒジュラに夢中になりました。といっても、実際に出会ったヒジュラはどんなにひいき目に見ても女装男性にしか見えない人ばかりで、私が夢中になったのは実在の美しいヒジュラではなくヒジュラという特殊なコミュニティーでした。ヒジュラの社会は強固に構築された縦割り社会で、グルとチェラの関係は、オーム真理教のグル(麻原)と子弟の関係と同じだと思ってください。

ニルヴァンというイニシエーション・セレモニーによってヒジュラは不可逆的に強固な自己認識を確立します。トランス状態で本当に無麻酔で根っこからバッサリと切断し、縫合さえしないニルヴァンが今でも実際に行われているのです!

当時、私はヒジュラが主人公の英語小説を書き続け、本書の原作である”A Feminized President”は私の6冊目のヒジュラ小説となりました。2015年7月に出版し、そのうちに日本語化しようと思いながら放置していましたが、最近、同書の書体をニューヨーク・タイムズ形式に変更するのと同時に校閲したのをきっかけに、日本語版を書きました。近年、アメリカで出版される小説は殆どがニューヨーク・タイムズ・スタイルになっており、私の2015年当時の作品は古いスタイルなので、直さないと古臭いというか洗練されていないと見られるからです。(引用符、ハイフン、句読点、省略記号等の使い方がポイントになります。)

第三章あたりまでは原作を大切にして日本語化しましたが、2015年と今では読み手の感覚が変化していることもあり、後半になるほど原作からの乖離を気にせずに書きました。特にニルヴァン以降は原作にはないエピソードも増やした結果、本書は「日本語訳」ではなく「日本語版」になりました。

私のヒジュラ作品はあくまでフィクションとしてのエンターテインメント小説であり、決して正確な文献ではありませんが、ヒジュラの第一人称で書かれた小説は珍しいので、ヒジュラになった気持ちでヒジュラの世界を疑似体験していただければ幸いです。なお、本書では病院で手術を受けましたが、無麻酔でのニルヴァンを疑似体験したい方は「第三の性への誘惑」をお読みください。


  • 購入はこちらから
  • 立ち読みコーナーで試読したい方はこちらをクリック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です