桜沢ゆうの新作小説「猫にマタタビ」が出版されました。舞台は北関東の田舎町です。
ある日、高校2年生の早坂蓮は、それまで会話を交わしたことのない風見洋子から千年杉まで呼び出されます。好きですと告白されるのかと思って誘いに応じましたが、そんな話ではありませんでした。
「猫にマタタビ」はネコの視点とネコの感性でジェンダー、友愛、恋愛、家族愛、性的衝動を含む人生(猫生)の真実を描くTSFエンターテインメント小説です。
性転のへきれきシリーズの小説には主人公がネコになるストーリーが何作品かあります。その代表が僕はネコである:今日からメスネコになりなさい(会社の中の境界線・続編)です。しかし、ネコになると言っても人間がネコの気持ちになって暮らすだけでした。今回の主人公はトリップした状態では主人公が食肉目ネコ科ネコ属のネコ(本物のネコ)になり、ネコの視点で第一人称で語る小説になっています。
ネコの第一人称という点では、夏目漱石の「吾輩は猫である」が元祖ですが、あれはオスネコであり、どちらかと言えば人間に近い感性で表現していると思います。今回の私の小説は食肉目ネコ科ネコ属のネコに感情移入して猫生(ニャンせい)と人生を描きました。
メスネコが異性のネコを目の前にしてどんな感情を抱きどんな性的衝動に襲われるのか、特に「発情」とはどんなものなのか、発情したメスネコは何を思い何を感じているのか? 何日間も突き詰めて考えた結果この小説が生まれました。
題名の「マタタビ」は木天蓼で、マタタビ科マタタビ属 の落葉つる性の植物です。マタタビはネコの大好物で、ネコはマタタビを与えられると狂喜することで知られており、大好きなものの例えとして「猫にマタタビ」と言われます。マタタビの実を食べなくてもマタタビの木をかじるだけでも、ネコがどれほど喜ぶか、動画をご覧ください。
この小説では元々ネコ族である人間がマタタビの実を食べることでネコ化します。ネコ目線で見たマタタビの実はこんな感じです。[クリックすると拡大:CC BY-SA 2.1JP by 白石准]
私は自分はネコ族であるという確信を持っていたので、実際にマタタビの実を食べてみました。マタタビの実が商業栽培されている形跡はネットで探しても見あたりませんでした。野生のマタタビの実は地域・季節が限定されており、簡単には手に入らないようです。マタタビの実を乾燥したものがネコ用の雑貨としてアマゾンで販売されていたのでそれを購入しました。十粒ほど入っており、一粒口に入れてゴリゴリと噛みましたが不味い!苦くて変な味で残念ながら私は発情せず、特に嬉しい気持ちにはなりませんでした。人間は野生の実を食べないと効かないのかもしれません。
残りの九粒は200㏄ほどの小瓶に入れてウィスキー漬けにしました。マタタビの実はゴリゴリと固いままですが、ウィスキーの色が濃くなり、不思議な味の薬酒になりました。私のようなネコ族の人間にとってはとても心休まる味で、寝る前に時々飲んでいます。
これは性転のへきれきTS文庫、日英TS文庫、その他の桜沢ゆうの出版物を紹介するHPと桜沢ゆうのブログを兼ねたサイトです。桜沢ゆうは千葉県在住の作家で、1997年に処女作「性転のへきれき(ひろみの場合)」を出版して以来創作活動を続けており、数多くのロマンス小説、ファンタジー小説、サスペンス小説、ソフトSF小説などを出版しています。作品の多くは性同一性障害、性転換のテーマを扱っています。小説の分類としてはTS小説が多く、その他は純文学となります。