桜沢ゆうの新作小説、「恋のセレンディピティ」が出版されました。レズビアンMTF三部作の第2弾です。
主人公はシルヴィアという女弁護士です。14歳の時に別れた同級生の男子との初恋の経験が長年のトラウマとなっており、何人かの男性と付き合いますがうまくいきません。後輩の女性弁護士とふとしたきっかけで肉体関係を持ち、女性との愛に目覚めます。
30歳の優秀な中堅弁護士になったシルヴィアは、ある日、大学時代の友人の姉妹のアンジェラから、自分が経営するパノラマ探偵事務所のパートナーにならないかとの誘いを受けます。シルヴィアの大学時代にアンジェラは刑事として活躍しており、格好いい独立した女性として憧れを抱いていました。
この小説はシルヴィアが「女性による女性のための探偵事務所」の看板弁護士として経験する、数奇で心躍る「事件」を描いた作品です。
終始レズビアン傾向の強い女性シルヴィアの性感で語られる小説ですが、桜沢ゆうが書いた小説ですので、MTFが対極の主題となるTSロマンス・サスペンス小説でもあります。
【追記】「恋のセレンディピティ」の2020年4月改訂版には英語版の全文が付録として収載されています。
恋のセレンディピティは日英TS文庫の小説で、同時発売の以下の英語小説の日本語版です。
原題 Serendipitous Love
著者 Yulia Yu. Sakurazawa
(英語版はKindle Unlimited対象ですので、右の画像をクリックしてご覧ください。)
性転のへきれきシリーズの小説は主人公が男性で「僕」が物語を第一人称で語り、「僕」が何らかの事情で女性化へと追いやられるというTSストーリーが大多数を占めています。
主人公の相手役は男性の場合と女性の場合がありますが、女性の場合は長身で支配的な人物が多かったのが実情です。
自分自身の心境の変化もあるのですが、柔和な美少年が女性化を強いられて強い女性と関係を結ぶというストーリーを書くことを少し重荷に感じるようになりました。いろいろな工夫をしても、第一人称で「僕」が不本意な経緯で女にされるというストーリーばかりだと、どうしてもワンパターンになります。
そんな状況から脱するための近道は、第一人称をやめて、第三人称の語り口にすることです。言い換えれば、神の視点と言うか「彼は彼女にこう言った」という語り口です。しかし、私は第三人称があまり好きではありません。
もう一つの方法は、主人公ではなく、相手役(あるいは第三者の男性)が性転換する羽目になるストーリーを第一人称で書くことです。最近の作品ですと「禁断のインスピレーション」(英語作品名は”Feminized for Inspiration”)で試したことがあります。支配的な女性「私」を主人公として、相手役の男性を女性化させるという構成でした。
女性がMTFの元男性を好きになる場合、その女性はレズビアンなのか、それともノーマルなのかということは難しい質問です。そもそもレズビアンの女性がMTFを好きになるのかどうか、非常に疑問です。タチの女性は弱く美しく従順なネコを好きになるのが普通なので、現実世界ではMTFはそんなネコに勝てるほど弱く美しくないのが普通だからです。
今回の企画はその点を自ら突き止めようとする試みでもあります。主人公はレズビアンの傾向を多かれ少なかれ有する独立性の高い女性とし、その「私」の第一人称で語ります。相手役または重要な第三者がMTFとなります。従来の作品と異なるのは、徹底的に「私」の立場を大切にして主人公の女性の考え、感情、感性を大事にして書くということです。
【レズビアンMTFロマンス企画】
第一弾 恋のセレンディピティ
英語版 Serendipitous Love
第二弾 あの頃の私はおてんばだった
英語版 Once I Was a Tomboy
第三段 最後の障壁
英語版 The Final Barrier
第一弾の出版時点で第二弾、第三弾はプロット段階ないしは校閲段階にあり日英版がほぼ同時に出版されました。
これは性転のへきれきTS文庫、日英TS文庫、その他の桜沢ゆうの出版物を紹介するHPと桜沢ゆうのブログを兼ねたサイトです。桜沢ゆうは千葉県在住の作家で、1997年に処女作「性転のへきれき(ひろみの場合)」を出版して以来創作活動を続けており、数多くのロマンス小説、ファンタジー小説、サスペンス小説、ソフトSF小説などを出版しています。作品の多くは性同一性障害、性転換のテーマを扱っています。小説の分類としてはTS小説が多く、その他は純文学となります。