あの頃の私はおてんばだった:レズビアンMTFロマンス三部作の第2弾

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桜沢ゆうの日英TS文庫の新作「あの頃の私はおてんばだった」が出版されました。レズビアンMTFロマンス3部作のうち第2弾の小説で、同時発売の以下の英語小説の日本語版です。

原作名:Once I Was a Tomboy
著者:Yulia Yu. Sakurazawa

主人公のアーバは北インドの貧しい農家の娘として生まれますが、活発な少女でいつも五人組の「ギャング」の一人として野山を駆け回って育ちます。女子が徹底的に軽視される地域柄ですが元気に遊びまわります。ところが初経の日から家での扱いが一変し、大人の女性としての窮屈な制約を押し付けられ、ついには親が決めた相手との結婚を命じられてアーバは途方に暮れるのでした。

アーバの少女時代から社会に出て自分の生き方に辿り着くまでの半生を、アーバの視点からアーバの感性で描いた小説です。

勿論、桜沢ゆうの作品ですので、MTFがもう一方のテーマになっています。

同時発売の英語小説 Once I Was a Tomboy はAmazonからKindle Unlimited扱いで出版されますので、Kindle Unlimitedメンバーの方は英語版もお読みいただけると幸いです。

アーバが少女時代に受けた極端な男尊女卑の仕打ちが第一章(試読部分)に描かれていますが、作り話か、昔のインドの話だと思われた読者が多いのではないでしょうか? いいえ、そうではありません。これは現在のインドでも日常的に起きていることなのです。

インドは二十九の州と七つの連邦直轄領から成る多民族国家です。日本も都道府県に分かれていて方言がありますが、インドは州が違えば方言ではなく言語自体が異なり、日本語と韓国語以上に通じないようです。本書で取り上げた家父長権問題(patriarchy)については、インド北部の州、とりわけハリヤナ、ビハール、パンジャブは古来の旧弊が根強く、第一章に描かれたような男子と女子の差別が現在でも公然と行われているそうです。勿論、全家庭がそうではなく、都市部の方が深刻ではなく、裕福な家庭では男子と女子が完全に同等の育てられ方をされるなどの違いがあります。

インドでは家父長権問題に限らず、極端から逆の極端まで幅広い違いが存在し、その違い(diversity)こそが私のような自称インド通にとってはインドの魅力なのだと思います。

M度が高いMTFの読者の方は、インド旅行中に拉致されてインド北部の州の家父長権ガチガチの村で女としての生活を強いられるようなストーリーを夢に描いてみれば良いでしょう……などと言うのは、インドの公民権問題の根深さを考えると不謹慎ですね。

【追記】「あの頃の私はおてんばだった」の2020年4月改訂版には英語版の全文が付録として収載されています。


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これは性転のへきれきTS文庫、日英TS文庫、その他の桜沢ゆうの出版物を紹介するHPと桜沢ゆうのブログを兼ねたサイトです。桜沢ゆうは千葉県在住の作家で、1997年に処女作「性転のへきれき(ひろみの場合)」を出版して以来創作活動を続けており、数多くのロマンス小説、ファンタジー小説、サスペンス小説、ソフトSF小説などを出版しています。作品の多くは性同一性障害、性転換のテーマを扱っています。小説の分類としてはTS小説が多く、その他は純文学となります。

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