「マリオの転生: 魔法のヤシ酒が紡ぐ運命の物語」を出版しました。本書は「A Secret Brew for Rejuvenation and Feminization」(著者:Yulia Yu. Sakurazawa)の日本語訳です。
「マリオの転生_魔法のヤシ酒が紡ぐ運命の物語」はインドのゴアを舞台とした小説です。小中高で教わった地理・歴史によると、インドとは、元々ヒンドゥー教の国で、ヒンドゥー教の中から仏教などの宗教が派生し、中央アジアから侵入したイスラム教徒に支配される時代が続いた後、イギリスの支配下となり、イギリスの統治が終わる時にイスラム教徒が大半だった地域(東西のパキスタン)が分離されて今のインドができたと習ったと思います。
しかし、ゴアは事情がかなり違っています。
古代インドの時代、紀元前3世紀にはゴアはマウリヤ朝に支配されていましたが、その後サータヴァーハナ朝、カダンバ朝などによる統治が続きました。イスラム教徒の支配下に置かれていたのはわずか数十年間で、デリー・スルタン朝の一時代をなすカリジ・スルタン朝(1290年~1320年)の時代に征服されましたが、14世紀にはゴアはヒンドゥー教徒のヴィジャヤナガル王朝によって奪還されました。1510年にポルトガル人が侵攻し、ゴアは450年間ポルトガル領となりましたが、1961年にインドがゴアを再編入してインドの一部となりました。
歴史的な背景がインドの他の地域と異なるため、ゴアにはインド文化とポルトガル文化が混ざり合った結果としての独自の文化があります。ゴアの建築物には、ポルトガル様式とインド様式が融合した美しいものが多く、ユネスコ世界遺産に登録されているバシリカ・デ・ボン・ジェズスなど、歴史的建築物が数多く存在します。
ゴアの料理にもインドとポルトガルの融合が見られます。地理的にシーフードも豊富ですが、本書にも登場する「ヴィンダルー」は、ポルトガル料理の技法を取り入れたスパイシーなカレーで、ゴアの代表的な料理として知られています。
音楽やダンスも、ゴアの文化の重要な要素です。ゴアでは、ポルトガルのファドやインドの古典音楽が融合した独自の音楽が生まれました。インドのパーティーの中心地としても知られており、ナイトライフが活発で、世界中のDJやアーティストが集まる音楽フェスティバルも開催されています。
本書の主人公のマリオ・ロドリゲスは、まさにゴアを象徴するような人物です。
インド人にとって「独立戦争」とはイギリスからの独立のための熾烈な戦いを意味するのですが、ゴアの人はイギリス支配とは無縁でした。インドが1947年にイギリスからの独立を果たした14年後の1961年12月、インド軍が圧倒的兵力でゴア各地に進軍して、わずか2日間でポルトガル軍が降伏し、ゴアはインド領として統合されました。