桜沢ゆうの新作「幻のウクライナ」が出版されました。ロシアのウクライナ侵略の周辺では今までに起きえなかったようなドラマが生まれています。この小説はロシアの特別軍事作戦(スペッツオペラーツィア)とそれを支えるプロパガンダにロシアの内側から迫る長編サスペンスドラマです。同時に、性転のへきれきTS文庫の一作品としてのTSエンターテインメント小説の側面も併せ持っています。
ロシアのウクライナ侵略が何故起きたか、どのように推移して、今後どうなるのかについては多くの書物や記事が溢れていますが、プーチン大統領の支持率が高止まりしている理由と、インターネット世代のロシア人が心からウクライナ侵略を支持しているのかどうかについて、明快な説明はなかなか得られないのが現実です。本書は十九~二十一歳のロシア人の立場から本心を明らかにする意欲的な小説です。
東京から北海道、国後島、樺太、モスクワ、イスタンブールを含むユーラシアを跨ぐ舞台での主人公の生きざまを、ともに体験していただきたい渾身の作品です。
とはいっても、決して重い雰囲気の小説ではなく、性転のへきれきTS文庫らしいTSエンターテインメント小説として気軽にお読みいただければと思います。