TSサスペンス小説「戦慄のバレンタインデー」を出版しました

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桜沢ゆうの新作小説「戦慄のバレンタインデー」を出版しました。過去、現在、未来の3回のバレンタインデーが主人公の運命を決定づけるという長編TSサスペンス小説(13万文字)です。バレンタインデーがメインテーマの小説なので、2月14までに出版しようと頑張って追い込みをかけたのですが、1回目の校閲が終わったのが2月14日夕方だったのでギブアップして、再校閲をかけてから出版しました。

バレンタインデーは元々古代ローマ時代のルペルカリア祭に起源を発しているそうです。古代ローマの隆盛は戦乱によってもたらされたという背景があり、若い男性はどんどん戦場に送り込まれました。従って、婚活市場は現在の日本とは全く違っていたと想像されます。また、女性が多くの男の子を生まずしてローマの繁栄はあり得なかったのです。

ルペルカリア祭は女性の結婚の女神ユノや豊穣の神マイアを崇拝する祭りであり、祭りの日の朝、若い男性たちは生贄として神にささげた山羊の皮を切り裂いて作ったムチを与えられ、街中を走り回り、目にした女性を生皮のムチで叩きます。といっても、古代ローマの若い男女がSMが趣味だったのではなく、ムチで叩かれた女性は安産と妊娠が叶えられると信じられていたからです。

ルペルカリア祭にはもう一つのイベント(メイン・イベント)がありました。それはユニークな婚活イベントでした。ルペルカリア祭の婚活イベントと、pairs、 marrish、 youbride、 ゼクシィ縁結びなどとの決定的な違いは、選ぶ権利が男性側にしかないという点です。ルペルカリア祭前夜に未婚の女性は自分の名札を桶(壺)に入れます。翌朝、男性たちが広場に集まって、名札を引きます。(クジ引きのような引き方なのか、名札を見て好きな女の子を選べたのかは文献によりニュアンスが異なり、私はよくわかりません。)

ルペルカリア祭の期間中、女性は自分の名札を引いた男性と寝床を共にしなければなりませんでした。しかし、驚くことにルペルカリア祭でできたカップルの大半が結婚したと言われています。古代ローマ時代の結婚観とは死生観と表裏一体で、女性にとって自分を保護し、子供を産ませてくれる男性に抱かれることは、現代とは全く異なる意味を持っていたのだろうなと想像します。生と死がすぐ近くで共存している世界では、女性にとって愛されることはもっと焦燥感の強い重大なことだったはず……。この小説の主人公は、バレンタインデーがもたらした疾風怒濤の中で、そんな気持ちが強くなっていきました。

とかなんとか、難しいことを書いた小説ではなく、ルペルカリア祭の婚活イベントを現代に再現したらどんなことになるかと、想像を膨らませて書いたのが「戦慄のバレンタインデー」という小説です。

これはTS小説です、と言えば、性転のへきれきTS文庫の愛読者の方なら展開が想像できるのではないかと思います。特にM度の高い小説ですので、その手の展開がお嫌いな方は避けていただいた方が安全です。

【追記】表紙画像に関する説明
表紙及び第一章に出てくる年賀状の背景に使われている画像はプラド美術館(Museo Nacional del Prado)が所蔵する1635年に描かれたLupercaliaと題する油絵の一部分を加工したものです。Andrea Camasseiというイタリア人の画家(ローマを中心に活躍 1602-1649)の作品でPublic Domainなのでcredit表示は不要ですが、歴史的に意味のある作品をトリミングして使用するにあたり全貌をお見せすべきと思いました。

この物語の中で理央、風花や荻原がどんな服装だったのかを想像するのに役立つと思います。


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