女弁護士に嫁いだ男

桜沢ゆう・性転のへきれきTS文庫の小説「女弁護士に嫁いだ男」を出版しました。

主人公の僕は大手商社に就職しますが、法科大学院に通っていた二学年上の彼女は司法浪人中です。商社マンになったので、つい上から目線でものを言っていたら、彼女が司法試験に合格すると立場がガラリと変ってしまいます。

小柄で美しい、性的にはノーマルな男性が、彼女の司法試験合格を契機として、女装しなければならないシチュエーションに追いやられ、色々な事情で時間をかけて、不本意ながらも少しずつ女性化が進んでいくというストーリーの小説です。

今回の準主役女優は女弁護士の可南子です。可南子は主人公の翼が大学1年の時、法学部の3回生です。大学祭で「これだ」と翼に目をつけてナンパし、2人の付き合いが始まったのです。2人は健全な付き合いを続け、翼は大手総合商社に総合職として入社します。しかし、可南子が司法試験に合格した時、翼は予想もしていなかった要求を突きつけられるのでした。

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TS小説ならありそうなシチュエーションですが、彼女が「私が稼ぐから奥さんになって」という態度にでてきたらどうするか? それを小説にしてみました。彼女の天敵ともいえるライバル弁護士との意地の張り合いのとばっちりを受けて何もかもが思いがけない方向に進んでしまいます。

実は一ヶ月ほど前に「お気に召すまま」という題の新作を書き始めたのですが、スランプに陥りました。「こんな小説を書いていていいのだろうか」と思い始めると、筆が進まなくなったのです。

思えば、変調のきっかけは「採用面接」が2017 よしもと・Amazon 原作開発プロジェクト・コンテスト優秀賞を取ったことでした。実は同コンテストには5作品を応募したのですが、「採用面接」は私から見ると5作品の中では世俗的で一押しではありませんでした。自分はその気になればもっといい小説が書けるのに、という自負がムクムクと出て来ると、主人公に成りきって書きたいことを書きたいままに書くという自分の従来のスタイルに自信が無くなってしまいした。

自分の方向性が見いだせない中で「日英TS文庫」を手がけました。既に出版した英語小説の日本語版を書くという、ある意味お気軽で手間のかからない作業を無心に行いました。「忘れな草」など、それなりに思い出に残る作品も出すことが出来ましたが、中編小説を次から次へと書くことではもうひとつ達成感が得られませんでした。

2018年の中後半の日本語長編小説は制服はジェンダーレス、失われたアイデンティティー、バンコク発の夜行列車の三作品しか出せていませんが、「もっといい作品を書きたい」という思いと、「とにかく新作を出さなければ」という焦りの中で書いたものです。

楽天Koboでの出版のために校閲・改訂・表紙一新の作業を実施していたところ、昔の自分が書いた小説は、他人が書いた小説と同じぐらいドキドキしながら読めることに驚きました。ワンパターンな部分もありますが、主人公の変化が生き生きと描かれており、さまざまなキャラクターの主要登場人物との心の交流もリアルで、主人公になった気持ちで小説の中にどっぷり嵌って読めると思います。我田引水そのものの発言ですね!でも、自画自賛したくてこんなことを書いているのではなく、「性転のへきれきの良さはこれだったんだ!」という事を再発見できたように思います。

「もっといい小説」を書く努力は惜しみませんが、徒に背伸びすることなく、性転のへきれきらしい、生き生きとしたリアルな性転換エンターテインメント小説を書いていこう、と初心に帰れた気がします。


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