「合コンはB案で」(改訂版)性転のへきれきシリーズの性転換小説 | 性転のへきれき

「合コンはB案で」(改訂版)性転換小説

桜沢ゆうの性転のへきれきシリーズの性転換小説「合コンはB案で」の改訂再出版(2018/10/29)を機に表紙カバーを変更しました。改訂は再校閲の範囲で実施し、ストーリーそのものには殆ど変化はありませんが、初版には無かった「あとがき」(1670文字)が追加されています。初版を購入済みの方は重複購入されないようご注意ください。

***

新入社員の遠山涼(僕)は同じ課で2年先輩の一般職の恵子から当日の合コンに誘われました。恵子がうちの会社の幹事をしている4対4の合コンで相手は社外なのですが、恵子の話は「ひとりドタキャンが出たから代わりにどうしても出て欲しい」ということでした。変な合コンだな、と思いました。恵子を含む4人のうちの1人がドタキャンして僕が代役で出るということは4人の内でドタキャンした1人は男子だという事になるからです。しかしドタキャンしたのは総務部の松本美乃里でした。ということは僕は美乃里の代役?まさか、女装して合コンに出ろと言われても絶対にイヤですよ、と返事したのです。

ところが、恵子によると合コン相手の4人は全員女性であり、8人のうちで僕1人が男性とのこと。合コンにはA案とB案があり、今日の合コンはB案とのことでした。「B案とはビーアン、つまりレズビアンの隠語なの。」と言われて納得。最近、合コン相手の男性の経済レベルが落ちすぎたので、高収入の女性を相手にしたB案の合コンがはやっているらしいのです。

女医、弁護士、公認会計士の女性が来るとのこと。僕はそんな不自然な結婚には興味が無いので断りましたが、恵子に絶対に出ろと脅されました。おまけに、費用は全額相手持ちとのことだったので、おいしいものがただで食べられるから、まあいいや、と気軽に参加したのでした。

「ただより高いものは無い」という言葉がありますが、僕が一体どうなるのかは小説を読んでのお楽しみです。


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合コンはB案で

第1章 全てはマイナス金利のせい

 

第1章 全てはマイナス金利のせい

「マイナス金利っていやよねえ」
突然、向かいの席の鎌田恵子が言い出した。

「僕が銀行に預けている金額はたかが知れているから、金利がマイナスになってもどうってことないけど」
そう答えると、恵子からバカにしたような表情が返って来た。

「うちの男性社員の発想ってその程度なのよね」
うんざりした、という口調だった。

「マイナス金利が発表されてから、利息は減るし、株価は下がるし、ボーナスも減ったし、殺人事件や、不倫事件も増えて、ロクなことが無いわ」

「瞬間的に円安になった後急激に円高が進んだのは予想外だったし、株価はそんな円高に加えて原油安と中国経済の不振のあおりを受けて下がったんじゃないかな。うちの会社の業績はマイナス金利が始まる前から悪化しているし、殺人事件や不倫事件とマイナス金利は関係が無いよ」

「男性って後付けの屁理屈を言うばかりで現状打破が出来ないのよね。日本の未婚男性の平均収入は低下の一途だし、それでも正社員ならまだギリギリ食べていけるけど、不安定な身分のサラリーマンが増えているわ。医者、弁護士、公認会計士などの高給取りの専門職領域は女性に浸食されて、男性の地位はどんどん低下している。そんな現状が分かってるの?」

「それほどお先真っ暗には見えないけどな。まあ、男性全体の状況が悪化した方が、僕は相対的にマシなポジションになるから結婚戦線には好都合かな、えへへ」

「セコイわね、最低! でも実際のところ、最近合コンしても相手はそんなレベルの男性ばかりなのよね。たまに結婚適格のレベルの男性を見つけても殆どが既婚なんだから。ホント、マイナス金利って最悪!」

「マイナス金利とは全然関係ないと思うけど……」

「世の中の流れとしてはモロに関係しているわよ。うちの会社の男性って皆、木を見て森を見ずって感じだわ」

「結局のところ、鎌田さんは何が言いたいわけ?」

「社内どうしで合コンが成立しなくなってから久しいわ。私たち女性社員にとって、うちの会社の男性社員は結婚対象とは考えられなくなったってことよ。最近は社外の合コンも相手のレベルがどんどん低下して魅力が減ってきた。これは、と思う男性が複数出て来た時には、結局アソビだったというのが最近の実態よ。だから合コンというシステムそのものが危機に瀕している」

「じゃあオーネットにでも登録すれば。それとも、合コンしたい男性のグループが無くなったのなら、女性相手に合コンすればどう? 渋谷区で同性パートナーシップ条例もできたし、そのうち同性婚もできるようになるかもしれないから」
恵子との議論に嫌気が差して、投げやりな話をしてしまった。その時、成瀬課長、菅原課長代理と土井里奈が会議を終えて席に戻ったので、恵子と僕はパソコンに向かって仕事に没頭しているふりをした。

***

その日の4時過ぎに課長と菅原課長代理が来客で席を外した時、お茶出しから返って来た恵子に「ちょっと来て」と呼ばれて、給湯室に引っ張り込まれた。

「ねえ、遠山君、ちょっと折り入ってお願いがあるんだけど」

「何だよ、一体」

「合コンなの。1人急に来られなくなって困っているのよ。今日の夕方、空いていないかな?」

「火曜日に合コンかあ。そりゃあ、空いてはいるけど、鎌田さんが男性の参加者を探しているということは社内の合コンなんだろう? どこの部の誰が来るのかを聞かないと二つ返事は出来ないな」

「社内じゃないわ。相手は社外で4対4よ。総務部の松本美乃里さんが急に来られなくなったからピンチヒッターが必要なのよ」

「変わった合コンだね。両方の側が男女混成なの? でも松本さんの代わりに僕が出ることになったら、男女のバランスが崩れるじゃない。男性5対女性3の合コンなんか参加するのはお断りだ」

「違うんだってば。合コンはA案じゃなくて、B案の方よ」

「B案の合コン? 何、それ?」

「知らないの? B案をカタカナで書くとビーアンでしょう。ビアンな合コン、つまり女性4対女性4のレズビアンな合コンなのよ。私の周囲でB案に興味がある女性は私を含めて4人しかいないから、仕方なく遠山君に代役を頼むわけ」

「ま、ま、まさか、僕に女装をしろというの? 絶対に嫌だよ。死んでもイヤ」

「遠山君ったら、面白いことを言うのね。BLコミックか何かの読み過ぎじゃないの? 女装しろなんてひとことも言っていないわよ。そのままの服装で参加してくれればいいのよ。合コンする相手は高収入の専門職の人たちで、遊びかもしれないけど若いOLと合コンしてみたいということなの。4人全部が真性のレズビアンじゃなくてバイセクシュアルの人もいるらしいわ。だから、男性特有のニオイが全くしない遠山君なら受け入れ可能なのよ。相手の幹事の方に遠山君の写真を添付してメールで打診したらOKが来たから大丈夫」

「ひどいよ、勝手に僕の写真まで送るなんて。言っとくけど、僕ずっと年上のオバサンたちとの合コンにお金を使うつもりは無いよ。今月はもうギリギリなんだ」

「言ったでしょう。相手は高収入の人たちなのよ。合コン代は全額負担してくれるの」

「へえ、そうなんだ」

「美味しいものがタダで食べられるわよ。高級なワインも飲めるし」

「えへへ、どうしようかなあ」

「これだけ頼んでもし断られたら私と土井さんからどんな目に会わされるか知らないわよ。土井さんは遠山君の上司だから人事考課で最低点をつけられるかもよ」

「土井さんは立派な人だからそんな公私混同をするわけがないよ。でも、土井さんがレズの合コンのメンバーに入ってるなんてショックだなあ。まあ、そこまで頼まれたら仕方ない。参加するよ」

「お互いチャンスだから頑張ろうよ。この会社で一生働いて社会の底辺で過ごしたいの? 大体、遠山君みたいなヤワで単純な子が厳しい競争に勝ち抜いて出世できるはずがないじゃない。立派なお医者さんか弁護士さんの女性に見初められれば、経済的に不自由のない人生を送れるわよ。私たちの場合は同性婚と言う壁を乗り越える必要があるけど、遠山君は男性だから気に入ってもらえれば簡単に妻の座が手に入るのよ」

「僕は人に頼って生きる人生なんて考えてことがないし……」

「発想を変えて、今日から妻の座を目指しなさい! 遠山君のお先真っ暗だった人生が、バラ色になるのよ。はっきり言って、遠山君は顔は可愛くてもチビで貧相な体格だから男性としての魅力度は男性100人のうちひいき目に見ても下位5%レベルよ。でも、奥さんを欲しがっているような生活力のある女性から見ると、可愛い顔をしていて小顔で華奢で性格も従順な遠山君はトップ10%に入るかもしれないわ。今日から、人生逆転よ!」

恵子が僕を乗せようとして繰り出す言葉のひと言ひと言が僕を滅入らせた。でも一度OKと言ってしまったことだし、タダで美味しいものを食べさせてくれるという魅力には抗いがたいものがあった。

「分かった、何時にどこに集合すれば良いの?」

「5時半に出られるようにしといて。詳細はメールを流すから。遠山君、もし今日の合コンで見初められなくても、今後B案の話があったら遠山君も呼んであげるわ」

「ありがとう。マイナス金利だし、頑張ろうね」

半分イヤミのつもりでそう言ったら、恵子から「やっとマイナス金利の意味が理解できたのね。でも、頭の良い女性には遠山君のそんなおバカなところが却って気に入られるかもしれないわ」と言われた。


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カテゴリー: リアル系TS小説

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