異性へのワープ:座礁クルーズ船

新型コロナ肺炎の脅威が広がる豪華クルーズ船を舞台にした、タイムスリップ・ロマンス・ミステリー小説「座礁クルーズ船:パンデミックの彼方へ(作者:桜沢ゆう)をKindle Unlimitedで出版しました。

米国SynerMix社の日本法人に勤務する32歳のモーリスは4月に女子大を卒業して母校の学生課に勤務する23歳の菅原ユリアと同僚の結婚パーティーで出会い、僅か2週間後に結婚します。二人は豪華クルーズ船で新婚旅行に行きますが、帰着時に新型コロナ肺炎の発生により下船できなくなります。

ユリアが新型コロナ肺炎を発症して帰らぬ人となり悲嘆にくれるモーリスは「天国のユリアのそばに行きたい」と強く願います。気が遠くなり、目覚めた時にモーリスは過去にタイムスリップしたことに気付きます。

「座礁クルーズ船:パンデミックの彼方へ」は究極の愛を模索するロマンス・ミステリー小説で、TS要素を含む長編小説(10万文字)です。本書は並行発売された以下の英語小説の日本語版です。

  • 題名:Stranded Cruise
  • 副題:COVID-19 Time Slip Romance
  • 著者:Yu Sakurazawa
  • 共著者:Lasya Shashimohan

日本語版には同英語版が付録として収録されていますのでご興味のある方は是非お読みください。

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(企画の経緯と執筆後の感想)

新型コロナ肺炎の第一波の最中の頃、アマゾンで新型コロナ肺炎に関する小説を探したところ、日英両アマゾンとも殆ど見つかりませんでした。カミュの「ペスト」を始め、パンデミックに関する古典小説は存在していましたし、新型コロナ肺炎に関する解説書やノンフィクションの書籍は数多く出版されていましたが、今回の新型コロナ肺炎に関する小説を既に出版していた作家は稀だったのです。

長編小説を一冊書くのに必要な日数は(作家にもよりますが)スラスラ書ければ二週間ほどです。細部にこだわったり、完璧な小説にすることに固執しなければ、普通の作家で一ヶ月あれば書けるはずなのに、ほとんど誰も出していないのは不思議だと思いました。大勢の人が新型コロナ肺炎に「興味」以上のものを持っている状況で、先陣を切って出版すれば必ず「売れる」はずなのに、そうしないということは難易度が高いからです。世界中の人たちが新型コロナ肺炎に関してその人なりに高い見識を蓄えている状況で、いい加減な作り話を出版すれば、ボコボコにされるという恐怖が、作家をビビらせているのだと思いました。

結局、私が新型コロナ肺炎をテーマにした小説の執筆に着手したのは、四月二十二日でした。作家仲間のラーシャが「いっしょに何かやらない?」と声を掛けて来たので、「新型コロナ肺炎とタイムトラベルを組み合わせたパラノーマルっぽいロマンス小説を書きたいと思っていたんだけど一緒にやる?」と返事をして、その日からアイデアのやり取りが始まりました。

なぜタイムトラベルが出てきたかというと、二〇二〇年一月期にTBSで放映された「テセウスの船」という連ドラがとても面白かったので、私も主人公が運命を変えるために過去にタイムトラベルする小説を書いてみたいと思っていたところだったからです。

クルーズ船を舞台にするのは、前述の理由で難易度が高いと思いましたが、私が書きたいのは社会ドラマではなくTSを伴うロマンス小説だったので、あまり細部の状況には突っ込まないようにして、クルーズ船を舞台にすることに踏み切りました。

登場人物のキャラクターを32歳のアメリカ人男性と23歳の日本人女性に絞った時点で、タイムトラベルの行き先の選択肢は限られており、私は迷わず東日本大震災の日のユリアを選びました。それから後は、自然にストーリーが出来上がり、ラーシャと二人で詳細なプロットを作り上げました。

そこまでは全て英語での作業です。

本来なら、そのプロットに従って英語版をラーシャが、日本語版を私がヨーイドンで書くのですが、今回は私は英語版の細部が非常に気になり、途中で細部まで意見交換を重ね、二人で英語版にかかりきりになりました。結局、英語版の最終原稿が出来上がった段階で日本語版は第2章までしか進んでおらず、英語版からかなり遅れて日本語版を出版することになってしまいました。

第1章から第4章まで、英語版と日本語版はかなり高い相同性を維持しています。しかし、第5章に恵子が登場すると、私は既に出版してしまった英語版の恵子に物足りなさを感じ始め、恵子とのやり取りを微妙に膨らませたり削ったりしたので、英語の得意な読者が恵子の動向に注目して日英両版を読めば、相違点が露わになると思います。

英語版はラーシャと私の共著、日本語版の著者は私という契約にしました。ラーシャは日本語が読めないので、英語版の翻訳ではなく並行版である日本語版の内容に責任を持てないからです。

新型コロナ肺炎と東日本大震災という、私にとって今世紀の重大イベント二つを取り込む小説を書くことは恐れ多い事で、ある意味で足がすくみました。でも、これは恋愛小説であり、「男性の心が女性の身体に転移した時に誰が何を思いどう感じるか」という私が以前からこだわっているテーマを深く突き詰めた小説です。「雷に打たれた女」や「失われたアイデンティティー」でも扱ったテーマであり、性転のへきれきTS文庫の幾つかの小説に顔を出したテーマです。一番大切なのに一番分かりにくい部分なので、どの程度共感して頂けたのかが不安です。

ロマンスの部分は極限的な状況で「一心同体」と「別離」を描きました。別離のシーンは少しセンチメンタルに走りすぎたかもしれませんが、思い出すだけで涙が出ます。

書き終えて、人生の相当な部分を2回経験したユリアのような疲れを感じています。本書は紛れもなく悲劇なので、すずやキャッシーの出現だけでは変えられない喪失感が残りました。


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