「飛び降りたニューハーフ」は小学校6年に仲良しになった主人公「僕」と彼女「大地」が、中学、高校、大学、社会人となるまで、二人の半生を追う小説です。
友人の飛び降り自殺という悲劇的なオープニングになっています。中学1年で男女3カップルの仲良し6人組が成立するのですが、そのうちの一人がニューハーフになっていて、勤務中に階段から飛び降りて重体になるというショッキングな出来事が起こり、残りの仲間がバーに集合するシーンから物語が始まります。
小学校6年での主人公と彼女との出会い、中学1年で6人組が成立した経緯、高校2年の京都旅行が回想形式で語られていきますが、そこには性転のへきれきらしいエピソードが満載されています。
性転のへきれき「由香の場合・夫婦スイッチ」を読んで倒錯的でマゾな世界に浸った方は多いと思います。「飛び降りたニューハーフ」の中の人間関係は更に倒錯的・被虐的で徹底的な女性上位の世界なのですが、それが非常に自然に描かれていて、読者を取りこんでしまいます。
ニューハーフ側から見た女性への愛情や女性との関係について著者の想いが詳説されているのも、この作品の特徴です。
主人公が意志に反して女装させられる場面がメジャーなものだけでも3回ありますが、ノーマルな男女の読者でも不自然を感じずに楽しく読める小説です。