新作「よしもと・Amazon 原作開発プロジェクト受賞作家が明かす、AIを使って小説を書く方法」

  • by

「AIを使って小説を書く方法」に関するガイドブックを出版しました。

2017年に出版した「よしもと・Amazon 原作開発プロジェクト受賞作家が明かす、売れる小説の書き方」というガイドブックは私の経験に基づく誠実なアドバイスやノウハウをまとめたものであり、その内容は現在も有効だと思います。

しかし、それだけでは済まされない新たな状況が生まれました。ChatGPTの出現です。アメリカのOpenAIという会社が2022年11月30日に一般公開したChatGPTというチャットボットが社会現象と言えるほどの大旋風を巻き起こしました。

当初、ChatGPTを使用するにはDiscordというSNSで招待状を受け取る必要があり、私はDiscordのメンバーだったので12月中旬にChatGPTにアクセスすることができました。実際に使ってみると、入力した質問に対して想像していた以上にレベルの高い回答が返ってきたので、面白くて夢中になりました。

ほどなく、高機能な有料版の提供が開始されるとの発表があったので希望予約を入れておいたところ、2023年2月上旬に招待状が届き、それ以来月額20ドルを支払って愛用しています。本書執筆時点での無料版と有料版の最大の違いは、無料版がGPT-3.5しか使えないのに対して、有料版ではGPT-4が使えることです。両者の能力差は微妙であり、アシスタントとして高校生のバイトを雇うのと、大学生のバイトを雇う程度の差と言ってよく、使い方次第で無料版でも十分実用に耐えます。ただ、GPT-4は一度の質問で入出力可能な情報量がGPT-3.5の倍になるので、私のように日常的に長い文章を処理する人間にとっては、月額20ドルを払うだけの妥当性があります。

ChatGPTは「自然言語処理系の生成AI」であり、適切な質問(テキスト・プロンプト)を入力すれば、人間が書いたのと同等のレベルの文章を英語で生成することができます。残念ながら日本語で生成される文章は人間と同レベルとは言い難く、文章の種類にもよりますが本書執筆時点では大学生(英語)と中学生(日本語)ほどの差があります。これは、ChatGPTのトレーニングの大部分が英語で実施されていることに起因しています。膨大な(おそらく数百億円レベルの)費用がかかることですが、日本がAI分野で他国に置いて行かれないためには国費を投入してでも、日本語で大規模なトレーニングを行ったAIを構築する価値があると思います。

小説家にとって、現在のChatGPTは「非常に役に立つツール」であり、「仕事を奪われるかもしれないライバル」の域には到達しません。今後AI全体の開発がさらに加速しても、職業を脅かされるレベルになるのは何年も先になるだろうと感じます。どうして現在のChatGPTが小説家を脅かせないのか? その理由を理解することが、ChatGPTをツールとしてよりよく使いこなすための鍵となります。本書ではChatGPTに何ができて何ができないのか、小説家の視点で掘り下げたいと思います。

小説家は自然言語生成AIが相手なのでまだ安穏としていられますが、画像領域のクリエーターであるイラストレーター、画家、写真家などの職域は、既に本格的にAIに脅かされつつあります。2021年に本格投入された3つの画像生成AIサービスであるMidJourney、Dall-E、StableDiffusion、及びStableDiffusionから派生した多数のAIによる激しい競争状態にあり、短いテキストプロンプト(通常、数語~数十語の英語)を入力するだけで、人間が1日かけて描くようなイラスト、絵画、写実画像を数秒~数十秒で生成してくれます。

私も小説を出版するたびに表紙デザインが必要になるのですが、フリーランスのイラストレーターに依頼すれば数万円かかるレベルの画像を、StableDiffusionを使えば無料で作成できます。人間のクリエーターと違って、StableDiffusionの場合、思い通りの構成の画像を一度で描かせるのは困難なので、数十語からなるプロンプトを少しずつ変化させて望みの構成に試行錯誤で近づけてから、16枚単位で複数の画像を生成させ、最終的に約100種類の画像を生成して、その中から自分の希望に最も近いものを選ぶという作業になります。全部の作業に要する時間は30分ほどです。

「よしもと・Amazon 原作開発プロジェクト受賞作家が明かす、売れる小説の書き方」には「表紙画像の作成」という章があり、Public Domainの画像の入手方法、及びCreative Commonsで商用利用可として公開された画像を活用する場合の合法的な出典表記について解説されています。同書で差し替える必要があるとすれば「表紙画像の生成」の章であり、上記のような画像生成AIを活用するのが時代の流れと言えるでしょう。画像生成AIによる表紙画像の生成については私もまだ試行錯誤を続けているのですが、非常に奥の深い分野であり、いずれ独立した解説書を書きたいと考えています。

「よしもと・Amazon 原作開発プロジェクト受賞作家が明かす、AIを使って小説を書く方法」はKindle Unlimitedの読み放題の対象です。

ご購読はこちらから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です