ユキの場合 第26章 性転換小説 連載 | 性転のへきれき

ユキの場合 第26章

第26章

朝が来て野上は去った。

私の体調が早く回復して3月下旬にでも東京に住めるようになれば、野上がヨーロッパから帰国後、月末に少しだけ会えるかも知れないが、4月19日の土曜日まで会えない可能性が高い。それまでは昨夜彼の電池から抜き取って蓄えたパワーで頑張るしかない。

18日の学部の卒業パーティへの出席は断念した。無理をすれば出られないこともなかったが、早く体力を回復する方が大事だ。

美沙に電話して、私が人妻でなくなったことは言ってもよいが野上と結婚を前提に付き合っていることは誰にも言わないよう頼んだ。

どんな情報がどんなルートで回りまわって野上の両親に伝わらないとは限らないので出来るだけ静かにしていたいからだ。

私の体は順調に回復していた。

まず、ダイレーターは苦労せずに17.5まで入るようになり、痛みも何分の一かに減った。

オリモノは殆ど減らず、時々出血もあるが、臭いはあまり気にならない程度まで減って来た。

菅沼先生が心配していた排尿は一度も問題が起きず、また腸も回復して普通に食事が摂れるようになっていた。

少し焦りを感じていたのは、もう一か月余りの間は女性ホルモンを開始できないことだ。高校時代の体験からすると私の胸は女性ホルモンで確実にBカップ近くまでは持っていける。しかし、女性ホルモンを再開してから数か月かかるので、それまでの間、野上に貧乳を晒すのが悲しい。

できることをしておこうと、バストアップのDVDを買って、バストアップエクササイズとマッサージを始めた。

マッサージといってもオナニーのように揉むわけではない。その本の著者はバストアップの有名な先生だがバストは揉むと小さくなるとのことで、特別なマッサージ方法の実行がポイントだ。

バストアップに効果のある天然成分が入ったクリームをつけて毎日5分間DVDの通りのバストアップを続けると、4、5日でAカップを余裕で超え、張りが出てきたのには驚いた。

その本には「AカップがEカップになった」と書いてあり、私もそこまでは信じていないが、Cカップは達成できそうな気がしている。女性ホルモンを使ってBカップに届かない場合は豊胸手術をしようかな、と悩んでいたが、もう大丈夫だ。

3月24日は朝8時過ぎの高速バスで大阪に行った。菅沼クリニックには1時を過ぎて到着し、しばらく待った後で先生が診てくれた。

「これほど順調に回復するのは数人にひとりですよ。」
というのが先生の第一声だった。

「性交も可能ですが、できれば6週間まで待ってください。」
とのうれしい知らせ。

「じゃあ、東京に戻って働いても大丈夫でしょうか。」

「大丈夫ですが、あと一ヶ月は体を使う仕事は控えてください。短めの勤務が可能ならそれに越したことはないし、ダイレーションの時間を必ず確保してください。ダイレーションが命、これを決して忘れないように。」

私はいつもダイレーションが命と思ってやっているのだが、命の意味が違うので可笑しくなった。

「性交一回でダイレーション一回が省略できると思っていいんでしょうか。」

「2か月過ぎるまでは省略しては駄目ですが、その後は大丈夫でしょう。勿論、毎朝毎晩それだけでは不足ですよ。」
と半分冗談で答えた。

「2か月検診と女性ホルモン療法を東京で受けられるのはこの病院です。先生には私から連絡しておきましょう。後で紹介状を書いておきます。」
と言って、病院を紹介してくれた。

今日のバスで池田に帰りたいので、紹介状は容子が明日郵送してくれることになった。

高速バスの最終便には楽に間に合ったが、阿波池田着は午後11時を過ぎてしまい、長い一日となった。

翌日、市役所に行って住民票を東京に移す手続きをしてから仕事探しを始めた。

仕事探しと言っても、インターネットで派遣会社を選んで登録作業をしたまでだ。今から正社員の職を探すのは不可能に近いからだ。書類審査後、面接と研修の後で正式登録となり、仕事の紹介が得られるようになる。

特別なスキルの無い新卒女子の派遣を求めるケースは限られているとのことで、派遣の料金としては最低ランクになると言われたが、仕方ない。

野上と結婚するまでの間、働きたいときに働けて定時に帰宅できる仕事としては、派遣が最適と思われた。結婚後は旦那さまの気持ち次第だが、必要に応じて働ければちょうどよい。

派遣会社に出す履歴書は、小中高大と学校の卒業年度が単純に列記された無味乾燥なものになった。趣味と特技の欄にも書くことが無いので、読書と料理と書いてみた。

企業の人事担当の人がこの履歴書を見ると「就活負け組のつまらない大卒女子」にしか見えないだろう。

そこで、まず、趣味をウェブコンテンツ制作、特技をコンピューター全般と書き直した。ブログは大学に入ったころから作っているし、パソコンには自信がある。

次に、写真館で履歴書に貼る写真を撮ることにした。企業担当者の手元に負け組女子のつまらない履歴書が10枚届いたら、一番可愛い子を選ぶに決まっている。

就活は男子としてしか経験が無いので女性もののリクルートスーツは持っていなかったことに気付き、近所の全国チェーンのスーツ屋さんで黒のリクルートスーツを買い、きつめのメイクをして、写真館で20ショット撮ってもらった中から一番良いのを選んだ。

メールで3月31日の面接に出るように言われたので、週末の夜行バスで東京に戻った。

 

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