ユキの場合 第16章 | 性転のへきれき

ユキの場合 第16章

第16章 最悪の結果

日曜日は頭がガンガンしてお昼までベッドの中でぐずぐずしていた。

携帯を見ると既に畑中からメールが届いていた。
「高原さん、昨日は本当にありがとう。松岡さんとお付き合いしたいという気持ちに変わりありません。よろしくお願いします。畑中」

返事の期限は月曜の夜なのに、日曜日の朝一番で明解なメールを送ってくるのは男らしいし、真面目で好感が持てる。

「さすが畑中さんだな。」
と思う。

美沙から
「畑中さんと付き合いたい」
というメールが来ればどんなに良いだろう。

野菜ジュースだけを口にして、洗顔もせずにブラブラしていた。何もする気になれない。

夕方が来て、ヨーグルトとバナナだけで胸が一杯になった。テレビを見る気にもなれない。

朝から化粧水も使っていない肌をクレンジングした。熱いお風呂に入って早く寝ようと思ったその時、携帯にメールが着信した。野上からのメールだと直感した。

「お願い、野上さん、美沙と付き合いたいと言って!」
祈るような気持ちでメールを開いた。

「ユキ、昨夜は突然すまなかった。お前に本気で恋をしてしまったみたいだ。ひと晩頭を冷やそうとしたが全く駄目だった。これまでにも女を好きだと思ったことは何度かあるが、こんなに苦しいのは初めてだ。人妻にこんなことを言っても始まらないことは分かっているのでお前は気にしてくれなくていい。美沙と畑中が上手くいくことを祈っている。すまなかった。野上。」

遊びでのキスではなかったんだ。体から力が抜けて、その場に座り込んだ。

後は美沙が畑中を指名するという奇跡を待つだけだ。半ば絶望的な気持ちでお風呂に入った。

お風呂に入っている時にメール着信の音が聞こえた。あれはきっと美沙だろう。永遠にお風呂から出たくない気持ちだった。

お風呂を出てメールを見た。
「昨日は色々ありがとう。わたしは野上さんとお付き合いしたいです。畑中さんにはごめんなさいとお伝えください。美沙。」

やっぱり。

恐れていた通りの結果が確定してしまった。

「どうしたらいいんだろう。」

まずは、やるべきことをやるしかない。私は3人宛に同時通報のメールを打った。

「ブーーッ。ざんねん!カップルは成立しませんでした。でも、共通の楽しい思い出のあるお友達として、これからも仲良くしようね。昨日は本当にありがとう。」

5分も置かずに美沙からメールが来た。
「ユキ、明日会えるかな?11時半に駅前のサイゼリアでどう? 美沙」

「了解!11時半にサイゼリアで! 人妻ユキ」

美沙からのメールは必ず「裕貴」で始まるのに、ユキと書いてある。やはり昨日のことを怒っているんだろうな。明日、刺殺されても仕方ない。私はそうなってもいい。

疲れ切った心の中で緊張の糸が切れて、ベッドに入るとあっという間に眠りに落ちた。

 

翌朝、ディズニーランドに着ていったコクーンのチュニックワンピを駅前のクリーニング店に出してからサイゼリアに向かった。あのワンピースは、美沙が私にくれるといったものとは別に、ディズニー用に私に着せるものとして出してきた。ほぼ新品で7万円もするブランド服を簡単にもらうわけにはいかない。きっと美沙はあの服は見るのもイヤかも知れないがクリーニングして返すべきだと思った。

美沙は先に来ていた。

「土曜日はどうもありがとう。」
と私から言った。

「野上君と畑中君には何となく顔を合わせづらいわね。」

「そうね。でもわたしは就活で学生課に行く以外は大学に行く用はないし、手術が今週末だからしばらくは東京にもいないわ。」

「そうか、いよいよ今週末だったわね。じゃあ、新幹線で大阪に行くのね。」

「ううん。水曜日の夜のバスで池田町に帰って、叔父さんが金曜日に大阪の病院まで車で連れていってくれるの。」

「あさっての晩か。大変ね。」

「でも、これでスッキリするわ。美沙と温泉にでも行けるようになる。」

「野上君にはいつ会うの?」

「どうして野上さんに合う必要があるのよ。いい、わたしは男の人を好きと思ったことはないし、それ以前に人妻よ。」

「でも、野上君はユキが好きと言ってきたんでしょう。」

「なぜそんなことが分かるの。」

「わたしが野上君と付き合いたいと返事したのに、カップルが成立しなかったと言うことは、野上君の気持ちが変わたということしかないでしょう。土曜日の夜、野上君とあんたを見ていて、悪い予感がしてたけど、やっぱりそうなってしまった。」

「ごめんね。わたしは美沙から言われた通りにして楽しい一日にしようとしてただけなのに。」

「二人を誘惑するように頼んだかしら。」

「誘惑なんてしてないわ。」

「あれが誘惑じゃなかったら、いったい何だっていうのよ。」
美沙が必至で声を荒げないように抑えながら、震える声で言った。

「今日会ったら、ボコボコに殴って首を絞めたいと思ってたけど、元々あんたを一緒に連れていくなんてことを思いつたわたしがバカだったんだから、殴るのはよすわ。」

「本当はわたしも、刺し殺されてもいいと思って来たの。」

「そうでしょうね。でも当分顔は見たくないから。」
二人とも注文したランチに殆ど手を付けずにサイゼリヤを出た。

「あ、忘れるところだった。美沙、これ、お借りしたチュニックワンピのクリーニングの受取証。仕上がりが木曜日だから、悪いけどもらってきてね。」

これが美沙の怒りに火をつけてしまった。

「返すなんてどういうつもり?あの服を見るたびに思い出せっていうの?野上君の腕にからみついて上目づかいで誘惑する恩知らずの薄汚い泥棒猫の姿を。」
と、美沙がどなった。

「美沙、そんなこと言わないで。わたしは・・」
言い終わらないうちに美沙から強烈な平手打ちを左頬に食らって、私は道に倒れた。

「一生わたしの前に現れないで。絶交よ。」
美沙は背を向けて去っていった。

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カテゴリー: ユキの場合, リアル系TS小説

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